1.はじめに
企業不祥事とは、企業が業務を行う中で発生し、多大な損失をもたらす可能性のある問題や事故のうち、当該企業による故意又は過失(注意義務違反)が主な原因となるものを言います。
企業不祥事には様々な種類のものがあり、業務上横領や情報漏洩といった刑事罰の対象となるものからSNSへの不適切な投稿といったものまで多岐にわたります。
しかし、どのような企業不祥事であったとしても、企業側の不注意や不適切な対応が原因で発生することが多く、不祥事の内容によってはその後の対応に多大な時間を費やさなければなりません。場合によっては、企業不祥事が原因となって、倒産につながるということも稀ではありません。東京商工リサーチが発表している「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2024年)によると、令和6年度のコンプライアンス違反を原因とする倒産は388件となっています。このように、企業不祥事は非常に重いものであり、不祥事が起きた場合には損失を少しでも減らすためには適切な対応を取ることが求められます。
企業不祥事は単なる偶発的な問題ではなく、起こるべくして起こるものです。そのため、企業不祥事が起こってからその対応を考えるというのではなく、あらかじめ企業不祥事が生じないように、適切な予防策や対応策を講じるようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、多くの企業犯罪を取り扱っているため、企業が抱える法的問題を徹底検証し、企業犯罪・不祥事案件に精通した弁護士が一から丁寧に、かつ迅速に事件対応をすることができます。
2.企業犯罪・不祥事が発覚した場合の対応
①捜査の端緒
・不正関与者による自己申告
・内部通報
・内部監査部門の監査
・マスコミ報道
・捜査機関による捜査
②初期調査
インターネット社会の発展した現代においては、情報が拡散するスピードは驚異的ですので、企業犯罪・企業不祥事の端緒を得た時点から当該情報が公になるまでの時間は極めて短いです。そのため、企業犯罪・企業不祥事の端緒を得た場合には、調査を先延ばしにしたり、正当化できる事情がないかと考えるのではなく、早急に調査に着手しましょう。また、企業犯罪・企業不祥事を第三者に公表されるのよりも、自主的に公表した方が企業に対するイメージ低下を軽減することができるので、弁護士に相談するなどし、記者会見を実施するタイミングや記者会見のリハーサルをするようにしましょう。
初期調査としては、不祥事に関する徹底した情報管理を行うとともに、隠滅されるおそれのある証拠を保全することが重要です。弁護士に相談をし、重要な証拠を把握するとともに、適切な証拠保全の方法を確認しましょう。
③本格調査の実施
初期調査によって企業犯罪・企業不祥事の概略を把握したら、以下のような本格調査を実施しましょう。
・関係者からのヒアリング
・当該事案に関係する文書(会計書類、契約書類、メール文書、帳簿、取引記録メモ等)の収集
・文書等を踏まえたうえでの関係者からのヒアリング
役員が関与していないことが明らかな企業犯罪・企業不祥事であれば、顧問弁護士による調査で足りることもありますが、役員の関与が疑われるような企業犯罪・企業不祥事の場合は、外部の弁護士等に中立的・第三者的な観点からの調査を依頼することが望ましいです。
④調査結果に基づく対応
調査によって獲得できた証拠で企業犯罪・企業不祥事に該当するのかを判断し、不正行為をした者がどのような法的責任を負うのかを検討します。検討の結果、企業犯罪・企業不祥事に当たる場合には、不正行為がなされた原因を分析し、具体的な再発防止策を考え、低下してしまった企業イメージを回復する手段を考える必要があります。企業犯罪・企業不祥事がマスコミ等により既に公になっている場合には、低下してしまった企業イメージを回復できるように調査結果を公表することも検討すべきでしょう。 企業犯罪・不祥事が犯罪に当たる場合には、当該行為を行った従業員・役員について、捜査機関に対し、告発・告訴するか否かを検討しましょう。犯罪に当たるか否かの判断や告発状・告訴状の作成は法的知識が要求されるので、弁護士に相談することをお勧めします。
また、従業員が起こした企業犯罪・不祥事によって、企業が損失を被った場合には、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求や労働契約の債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)を検討することになります。役員が起こした企業犯罪・不祥事によって、企業が損失を被った場合には、会社法に基づく損害賠償請求を検討しましょう。
さらに、不正行為をした者について、企業秩序維持の観点から懲戒処分も検討しましょう。なお、懲戒処分をするに当たっては以下の点に注意しましょう。
・懲戒処分は、その違反行為の程度に照らして均衡のとれたものである必要がある(相当性の原則)。
・同等の義務違反(非違行為)については、同等の処分がなされるべき必要がある(平等取扱いの原則)。
・懲戒を行うに際しては、本人に弁明の機会を与えることが、手続の適正の観点から最小限必要である(適正手続の要請)。
なお、自宅待機処分は、証拠隠滅の防止や被害者への接触の防止の観点から命ずるものであり、この期間の賃金を支払うのであれば、不当に長期間にわたる自宅待機処分でない限り、適法として扱われます。
3.企業イメージを損なわないようにするためには
企業犯罪・不祥事が公表されると、企業イメージが低下するだけでなく、上場企業である場合には、株価低下という形で企業価値が損なわれることになります。
企業イメージを損なわないようにするためには、企業犯罪・不祥事が発生した原因を究明し、再犯防止策を構築する必要があります。もっとも、企業内部の者による調査である場合には、第三者からその公平性・中立性が疑われてしまい、十分な調査であったとしても不当に不十分な調査であったと評価されるおそれがあります。そのため、公平性・中立性を担保するためにも、外部の者から組織される第三者委員会による調査が重要となります。