人身事故(ケガ事故)の対応

1.はじめに

私たちが生活をするにあたって、自動車の存在はなくてはならない存在です。昨今、若者の車離れが取り沙汰されるなど、車を利用しない生活を送る人が増えています。しかし、マイカーを所有しないものの、旅行に行く際に、レンタカーを借りて運転するという人は多いのではないでしょうか。現に、運転免許を取得している人数は、令和6年時点で8174万2303人と多くの人が車を運転することができる環境にいます(警察庁『運転免許統計(令和6年版)』参照)。

車は便利な道具であるとともに、道路交通法を守っていなかったり、守っていたとしても交通事故を引き起こしてしまうと、重大な結果を引き起こしてしまう危険性が潜んでいます。警察庁の発表によると、令和6年度の交通事故による重傷者数は、27,285人です。そのため、「自分は安全運転をしているから大丈夫だ」と慢心するのではなく、万が一に備えて、人身事故を起こしてしまった場合の刑事責任と対応策を知っておきましょう。

2.人身事故を起こしてしまった場合の刑事責任

人身事故を起こしてしまった場合に問われる刑事責任は以下のものです。

(1)危険運転致傷

危険運転致傷の法定刑は「15年以下の拘禁刑」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)又は、「12年以下の拘禁刑」(同法3条)です。「正常な運転が困難な状態に陥る」ことの認識がある場合には前者が成立し、「正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で自動車を運転する」認識がある場合には後者が成立するとされています。同法2条に掲げられている具体的な行為態様は以下のとおりです。

①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。いわゆる飲酒運転のことです。

②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。いわゆる速度超過のことです。

③その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。いわゆる速度超過のことです。

④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。いわゆるあおり運転のことです。

⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為。いわゆるあおり運転のことです。

⑥高速自動車国道又は自動車専用道路(において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為。いわゆるあおり運転のことです。

⑦赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。いわゆる信号無視のことです。

⑧通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。いわゆる通行禁止道路進行のことです。

(2)過失運転致傷

過失運転致傷の法定刑は「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)。

(3)業務上過失致傷・重過失致傷

業務上過失致傷・重過失致傷の法定刑は「5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です(刑法211条)。

(4)飲酒運転が発覚するのを免れるための行動をした場合

飲酒等の影響により、不注意による人身事故を起こした場合に、飲酒等の有無又は程度が発覚することを免れるために、更に飲酒等をすることをした場合の法定刑は「12年以下の拘禁刑」です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条)。

(5)無免許運転で死亡事故を起こした場合

無免許運転によって上記態様での死亡事故を起こしてしまった場合には、法定刑が加重されることになっています(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律6条)。

(6)適用される犯罪の区別

死亡事故が生じた場合であっても、危険運転致傷罪が成立するわけではありません。場合によっては、過失運転致傷罪が成立するにとどまることもあります。

どちらの罪名が成立するのかという検察官によりますが、危険運転致傷罪の方が、正常な運転ができないことについての認識が必要であったり、危険な運転であったという立証が必要であることから、過失運転致傷罪よりも立証のハードルが高く、立証の困難さから過失運転致傷罪での適用ということも考えられます。

また、自転車による死亡事故の場合には、過失運転致傷や危険運転致傷の適用はないので、業務上過失致傷・重過失致傷の適用が多いです。

3.手続の流れ

 人身事故を起こしてしまった場合には、その運転者又は同乗者には、道路交通法72条により、①直ちに車両等の運転を停止して、②負傷者を救護し、③道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならず、④警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならないとされています。このような義務を履行したうえで、警察官が事故現場に駆け付け、交通事故の実況見分が行われます。その際には、加害者側と被害者側双方の言い分の確認や、車両の破損状況、交通事故現場の見取り図の作成等が行われます。実況見分が終了したタイミングで逮捕されるケースもありますが、後日、取調べが実施されます。

4.人身事故を起こしてしまった場合の対応策

上記のとおり、適用される罪によって、法定刑が大きく異なります。そのため、人身事故を起こしてしまった場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、弁護活動を受けることが大切です。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所所属では、交通事故・交通違反を重点的に扱っているため、死亡事故を起こしてしまった方の弁護を得意としている弁護士ならではの弁護活動を提供することができます。以下は、その一例です。

①警察官に対し、逮捕しないでほしい旨の働き掛け

②逮捕された方とすぐに接見(面会)して、取調べの対応のアドバイス及び事件の見通しについての法的なアドバイス

③調書作成までに間に合えば、調書作成の対応のアドバイス

④勾留請求までに間に合えば、検察官に対し、勾留請求しないようでほしい旨の働き掛け

⑤逮捕された方とご依頼者様が異なる場合には、ご依頼者様に対する接見の状況及び伝言の報告

⑥不起訴・無罪に向けた容疑者・犯人に有利な証拠収集(弁護士による証拠収集。示談交渉等)

⑦勾留決定前であれば、裁判官に対し、釈放してほしい旨の働き掛け

⑧勾留決定後であれば、裁判所に対し、勾留決定を取り消して釈放するように求める書類の提出

⑨接見等禁止処分が付されている場合、裁判所に対し、家族や関係者との接見(面会)を許可するように求める書類の提出

⑩検察官に対し、不起訴処分が妥当である旨の働き掛け

⑪保釈請求

 ⑫無罪獲得に向けた裁判準備

⑬執行猶予又は減刑に向けた裁判準備

実際に、人身事故を起こしてしまった場合でも、運転手に不注意がないことや注意があったとしても交通事故が発生することを回避することができなかったこと等を主張・立証することで不起訴処分や無罪判決の獲得することを目指すことができます。

また、人身事故の場合には、公判請求によって正式裁判が行われることが多いですが、被害者との間での被害弁償又は示談を締結したり、運転の態様や不注意の程度等から被告人に有利な事情を主張・立証することによって、刑の大幅な減刑、ひいては執行猶予付き判決の獲得を目指すことができます。

5.おわりに

人身事故を起こしてしまうと、運転免許証の停止や取消処分を受けることになります。また、逮捕されてしまうと、長期間の身体拘束を受けることになりますので、仕事に行くことができず、職を失い、本人のみならず家族までもが路頭に迷うことになってしまうおそれがあります。加えて、逮捕されてしまうと、マスコミに実名報道をされてしまい、その結果、今までは当たり前だと思っていた普通の生活を過ごすことができず、身体的・精神的苦痛を受けることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通事故・交通違反事件を重点的に扱っており、交通事故・交通違反に強い弁護士が初動から刑事裁判まで一貫してサポートいたします。人身事故を起こしてしまうと、刑事事件の流れがスタートしてしまうため、ご依頼者様の不安をゼロにすることはできませんが、ご依頼者様の免許の処分や今後の生活への影響を最小限にとどめるために全力でサポートさせていただくことをお約束いたします。

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